練習記録

ピアノ練習と読書のメモです。

「LTP」「覚えるために忘れる理論」

LTPは脳の「記憶の素」です。これは簡単な実験で調べることができます。薬を与えたり遺伝子を操作したりして、脳からLTPをなくしてしまった時に、その動物に何が起こるかをチェックすればよいわけです。実際、LTPを奪われた動物は、気の毒なことに、記憶ができなくなってしまいます。逆に、LTPがよく起こるようにした動物では、記憶力が高まります。(~略~)

まず、注目すべき点は、LTPは神経細胞を繰り返し刺激して生じる現象だということです。海馬を一回刺激しただけでは、決してLTPは起こりません。何度もなんども刺激を反復して、はじめてLTPが生じます。

 

海馬にそっと細い電極を指して、海馬を繰り返し刺激してみました。するとどうでしょう。神経細胞同士の結びつきが強くなったのです。しかも、刺激のあと、ずっと結合度が増強したままでした。つまり、長期的に神経細胞が活性化されたのです。

神経細胞そのものが復習を必要としている、という内容です。忘却曲線の実験でも復習で忘れる速さが遅くなる結果がでています。

 

復習については「覚えるために忘れる理論」が参考になります。これはどんな記憶にも保存と検索という2つの力があるという理論です。保存は覚える力、検索は思い出す力になります。思い出そうとする復習は、検索の配分が大きいのではないか、と思います。

記憶を使えば記憶は変わる。それは、良いほうに変わる。忘れることで、覚えたことがより深く脳に定着する。それは、余計な情報をふるいにかけるとともに、覚えたことを一時的に断絶することで可能になる。断絶した記憶をその後引きだすと、検索の力と保存の力が以前よりも高まるのだ。

暗譜では、記憶をひきだす検索時に、新たな気付きが得られることがあります。コードが転回しているだけで、実はⅣ→Ⅲ→Ⅱ→Ⅰと覚えやすい内容だったとか、リズムの影に隠れてメロディは、ソ→ファ→ミ→ファ→ソと左右対称型だったり。繋がりが強化された経験が多いです。

以前に書いた「流暢性の幻想」「記憶の干渉」は、保存と検索どちらか、もしくはどちらにも問題が発生した状態なのかもしれないです。

思い出そうと努力することで学習と記憶が強化される。簡単に学べるほうがよく理解できると単純に考えがちだが、正反対であることが研究によあって証明されている。頭を働かさなければならないほど、学んだことがしっかりと身につくのだ。想起練習がむずかしければむずかしいほど、うまくいったときには学習が強化される。一度テストしたあと、次の想起練習までに時間をあけるほうが、思い出すのに努力を要するため、長期記憶の強化に効果的だ。

「記憶の干渉」は思い出すために苦労するため、検索としては望ましい困難になる気もしますが。相反してる要素もありますね。保存の力が弱すぎるため問題なのか、何事にも適量が存在する、というバランスの問題なのでしょうか。

保存と検索を分けることで、暗譜の時間配分を見直すきっかけになりそうです。

『受験脳の作り方』『脳が認める勉強法』『使える脳の鍛え方』に詳しい実験結果が記載されています。忘れることにも意味がある、という内容に勇気付けられます。